振り込め詐欺の被害に遭い、「大切なお金を騙し取られてしまった…」「お金はもう戻ってこないのだろうか…」と、計り知れない不安や怒り、焦りを感じていらっしゃることでしょう。
「振り込め詐欺救済法」という制度の名前は聞いたことがあっても、実際のところ返金率はどのくらいなのか、本当に自分も対象になるのか、疑問は尽きないはずです。
インターネットで「返金率88%」といった数字を見つけても、それがご自身の被害額に対してなのか、確信が持てないかもしれません。
この記事では、振り込め詐欺被害者救済法の仕組みや返金率の正しい見方、被害に遭ったら今すぐやるべきこと、返金までの具体的な手続きと期間など、振り込め詐欺等の被害にあわれた方(金融庁)に必要な情報を網羅的にお伝えします。
- 被害に気づいたら、振込先の金融機関に一刻も早く電話し口座凍結を依頼する
- 警察に被害届を提出し、受理番号を控えておく
- 振込利用明細票の原本を必ず保全する
- 犯人とのメールやチャットの履歴、詐欺サイトのスクリーンショットなどすべての通信履歴を保存する
- 金融機関や預金保険機構の公告をチェックし、被害回復分配金の支払申請期間内に手続きを行う
- 弁護士に依頼し、複雑な手続きを代行してもらう
被害回復の可能性を少しでも高めるためには、迅速かつ正確な対応が不可欠です。この記事でご自身の状況を整理し、次にとるべき行動を明確にするための一助となれば幸いです。
不安が解消されない、手続きが難しいと感じた場合は一人で抱え込まず、できるだけ早く専門家へご相談ください。

振り込め詐欺救済法とは?返金率はどのくらい?

振り込め詐欺の被害に遭ったとき、「お金はもう戻らない」と思い込んでしまう人は少なくありません。
そんな中で、被害者を少しでも救済する仕組みとして作られたのが 振り込め詐欺救済法(正式名称:犯罪利用預金口座等に係る資金返還等に関する法律)」です。
この法律は、詐欺グループが使っていた銀行口座を金融機関が凍結し、そこに残っていた残高を 被害回復分配金として被害者へ返還するための手続きを定めたものです。
つまり、個人が直接犯人と交渉して取り戻す仕組みではなく、金融機関と預金保険機構が動いて返金を図る制度と考えるとイメージしやすいです。
また、ネット上でよく見かける「返金率88%」や「返金率75%」といった数字には誤解がつきまといます。これらが被害額の何%が戻るという意味ではない点も、正しく理解しておきたい部分です。
この章では、振り込め詐欺救済法の仕組みと、返金率に関する誤解の多い数字についてわかりやすく解説していきます。
振り込め詐欺救済法の返金対象になる被害
振り込め詐欺救済法は、オレオレ詐欺、還付金詐欺、架空料金請求詐欺といった、振り込め詐欺(特殊詐欺)によって、犯人の犯罪利用預金口座にお金を振り込んでしまった被害者を救済するための制度です。
法律の目的は、犯罪に使われた口座を金融機関が迅速に取引停止し、その口座に残っている資金を、被害に遭った方々に「被害回復分配金」として分配することです。
あくまで国内の金融機関の預金口座への振込による被害が対象であり、例えば犯人に直接現金を手渡した場合や、海外の口座へ送金した場合などは、残念ながらこの法律の直接の対象とはなりません。
公表される「返金率88%」の正しい意味
インターネットなどで「振り込め詐欺救済法 返金率 88%」といった情報を見たことがあるかもしれません。
これは、預金保険機構が公表しているデータ(振り込め詐欺救済法に基づく被害回復分配金の支払状況)に基づいていることが多い数値です。
しかし、この88%という数字は、被害総額のうち88%が戻ってきたという意味ではありません。これは非常に誤解されやすいポイントです。
実際の統計が示しているのは、「分配金支払の決定が出た口座のうち、実際に支払われた割合」または「申請者のうち、分配金の支払いが決定した割合」といった、手続き上の進捗率に近い数字です。
つまり、この88%は「制度の申請が通りやすい」「書類が揃っていれば支払決定が出やすい」という傾向を示す数字であって、被害額が戻る割合ではないという点が最重要ポイントです。
振り込め詐欺救済法の返金率と実際の返金確率が大きく異なる理由
では、実際の被害額に対する返金率はどのくらいなのでしょうか。
警察庁が発表する特殊詐欺の被害総額は年間数百億円にのぼりますが、一方で預金保険機構が発表する被害回復分配金の支払総額は、その数%程度(年間十数億円〜数十億円規模)に過ぎません。
この事実は、被害総額全体から見た実際の返金率は、極めて低いという厳しい現実を示しています。
なぜ、これほどまでに返金率が低いのか。
最大の理由は、口座凍結が間に合わず、犯人グループがすでに預金のほぼ全額を引き出してしまっているからです。
振り込め詐欺救済法は、あくまで口座凍結時に残高が残っていなければ、分配しようがない制度です。
詐欺グループは振込があると即座あるいは数十分以内に、出し子と呼ばれる役割の者がATMで現金を引き出してしまうため、被害者が詐欺に気づいて金融機関に連絡し、口座を凍結した時点では、すでに残高がゼロか、ごくわずかになっているケースが大多数なのです。
「返金率75%」と預金者保護法の補償との違い
「返金率75%」という数字も、振り込め詐欺に関連して見かけることがありますが、これは振り込め詐欺救済法とは別の法律である預金者保護法に関連する数字です。
預金者保護法は、キャッシュカードや通帳が盗難されたり、偽造されたりして、自分の意図に反して不正に預金が引き出された場合の補償を定めた法律です。
この法律では、原則として金融機関が被害額の全額を補償することになっています。しかし、被害者本人に暗証番号を推測されやすいものにしていたなど、過失があった場合は、補償額が4分の3の75%に減額されることがあるのです。
振り込め詐欺の中でも、警察官や金融機関職員などを装って家を訪問し、言葉巧みにキャッシュカードを盗み取り、暗証番号を聞き出して現金を引き出すキャッシュカード受取型の被害の場合、この預金者保護法の対象となる可能性があります。
ご自身でATMを操作して振込をした場合は救済法、カードを盗まれて不正に引き出された場合は預金者保護法、という大まかな違いがあります。
振り込め詐欺にあったら今すぐやるべき4つの行動

「振り込め詐欺に遭ったかもしれない」と気づいた瞬間、パニックになってしまうかもしれませんが、深呼吸をして、すぐに行動に移してください。
被害回復の可能性は、この初動の速さにかかっています。 やるべきことは、主に以下の4点です。
(参考:振り込め詐欺にあったら | 預金保険機構)
- 最優先で警察へ届け出ることで公的な被害記録を残す
- 振込先の金融機関に連絡し口座凍結を依頼する
- クレジットカードや決済アプリで支払った場合は各社へ即連絡して補償可否を確認する
- 振り込め詐欺でお金を取り戻すために必要な証拠を今すぐ保全する
1.最優先で警察へ届け出ることで公的な被害記録を残す
まず、ためらわずに警察へ連絡してください。 緊急の場合は「110番」、どこに相談してよいか分からない場合や、緊急性はないが相談したい場合は、警察相談専用電話「#9110」(政府広報オンライン)に電話します。
または、最寄りの警察署の窓口に直接出向いても構いません。
警察に連絡する目的は、被害の事実を届け出て「被害届」を受理してもらうことです。これにより、事件として捜査が開始されます。 警察から被害届の受理番号が発行されたら、必ず控えておいてください。
この受理番号は、後で金融機関に口座凍結を依頼したり、救済法の申請手続きを行ったりする際に、公的に被害が認められた証拠として必要になる場合が多いため、非常に重要です。
2.振込先の金融機関に連絡し口座凍結を依頼する
警察への連絡とほぼ同時、あるいは最優先で行うべきなのが、お金を振り込んでしまった振込先の金融機関への連絡です。
ここで注意が必要なのは、ご自身がいつも使っている取引銀行ではなく、犯人に指示されて振り込んだ相手方(振込先)の銀行、信用金庫、信用組合などの金融機関に連絡することです。
振込時の利用明細票や、インターネットバンキングの履歴を確認し、振込先の金融機関名、支店名、口座番号、口座名義を正確に把握します。
その金融機関のコールセンターや、振り込め詐欺被害ご相談窓口といった専用ダイヤルに電話し、「振り込め詐欺の被害に遭ったので、指定の口座を凍結してほしい」と明確に伝えてください。
この連絡の早さが、口座に残高が残るかどうかを左右します。
3.クレジットカードや決済アプリで支払った場合は各社へ即連絡して補償可否を確認する
もし被害が銀行振込ではなく、偽のショッピングサイトなどでクレジットカード決済をしてしまった場合や、〇〇PayなどのQRコード決済を利用してしまった場合は、話が別です。
この場合は、振り込め詐欺救済法の対象とはなりません。 すぐに、利用したクレジットカード会社や、決済アプリの運営事業者に連絡してください。
事情を説明し、「決済を停止してほしい」と依頼します。
クレジットカードの場合、カード会社が調査した結果、不正利用と認められれば「チャージバック(決済取消・返金)」が行われる可能性があります。
いずれにせよ、被害に気づいた時点ですぐに連絡し、カードやアカウントの利用停止措置なども含めて相談することが重要です。
4.振り込め詐欺でお金を取り戻すために必要な証拠を今すぐ保全する
警察への届出や金融機関での手続き、そして将来の返金申請や、万が一の民事訴訟に備えて、被害に関する証拠はすべて保存してください。
焦りや怒りから犯人とのやり取りを消去したくなるかもしれませんが、それが被害回復の道を閉ざすことにもなりかねません。
- 振込時の「利用明細票」(ATMで発行された紙、またはネットバンキングの画面)
- これは必須の証拠です。
- 犯人グループとのすべてのやり取り履歴
- 電話の録音データ(もしあれば)
- メールの本文
- SMS(ショートメッセージ)の履歴
- LINE、Facebookメッセンジャー、InstagramのDMなどのチャット履歴(※スクリーンショットだけでなく、可能ならテキストデータやエクスポート機能で保存)
- 相手に関する情報
- 振込先の金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義
- 相手の氏名(偽名の可能性大)、電話番号、メールアドレス
- 詐欺サイトのURL、ウェブサイトのスクリーンショット
これらの証拠は、ご自身の被害を客観的に証明するための唯一の手段です。

振り込め詐欺救済法でお金を取り戻すための手続きと期間

被害直後の「口座凍結」依頼が完了しても、すぐにお金が戻ってくるわけではありません。振り込め詐欺救済法に基づく分配には、法律で定められた厳格な手続きと、相応の期間が必要です。
ここでは、分配金が支払われるまでの流れと、必要な期間について解説します。
振り込め詐欺被害者救済法による被害回復分配金の仕組み
振り込め詐欺救済法による返金は、正確には被害回復分配金の支払と呼ばれます。 この制度の基本的な仕組みは、凍結された口座の残高を、被害を申請した被害者全員で、被害額の割合に応じて分け合うというものです。
例えば、凍結時の口座残高が50万円だったとします。
被害額100万円の被害者Aさんと被害額100万円の被害者Bさんの2名が申請した場合、被害総額は200万円です。 残高50万円を、被害額の割合(A:B = 1:1)で分け合うため、AさんもBさんも、それぞれ25万円ずつの分配金を受け取ることになります。
もし、被害者がAさん一人で、残高が50万円だった場合は、Aさんは50万円全額を受け取れます(ただし被害額100万円のうちの50万円)。このように、口座残高が被害総額より少ない場合は、被害額の一部しか戻ってこない、ということを理解しておく必要があります。
口座凍結から失権公告・申請書提出までの流れと必要なスケジュール
被害回復分配金が支払われるまでには、法律で定められた以下のステップを踏む必要があり、時間がかかります。
- 口座凍結(取引停止)
- 被害者からの申告などに基づき、金融機関が犯罪利用口座を凍結します。
- 失権公告(しっけんこうこく)
- 金融機関は、預金保険機構のホームページに「この口座の預金(残高)に対する権利は、〇月〇日までに申し出ないと失われますよ」という公告(お知らせ)を掲載します。これは主に口座名義人(犯人側)に向けた通知です。この公告期間は、法律で60日以上と定められています。
- 預金債権の消滅(失権)
- 公告期間中に、口座名義人から正当な権利の主張(「このお金は犯罪収益ではない」という反論)がなければ、その預金(残高)は口座名義人のものではなくなります(権利が消滅します)。
- 支払申請公告
- 次に、金融機関は再び預金保険機構のホームページに、「この口座の残高について、被害に遭った方は〇月〇日までに分配金の支払申請をしてください」という公告を掲載します。
- 被害者による支払申請
- 被害者は、この支払申請の公告期間内(法律で30日以上と定められています)に、金融機関に対して「被害回復分配金支払申請書」と必要な証拠書類を提出します。
- 審査・分配額の決定・支払
- 金融機関は、提出された申請書と証拠に基づき、被害の事実や被害額を審査します。申請期間が終了した後、他に申請者がいないか、被害総額はいくらかを確定させ、凍結残高を元に各被害者への分配額を決定し、支払いを行います。
振り込め詐欺救済法の申請書の入手方法と記載ポイント
被害回復分配金の支払申請手続きは、上記スケジュールの「4. 支払申請公告」が開始されてから可能になります。 申請期間が始まったら、被害者自身で手続きを行う必要があります。
※弁護士に依頼し、代理人として申請してもらうことも可能です。
申請書(被害回復分配金支払申請書)は、公告を行った振込先の金融機関のホームページからダウンロードするか、本支店の窓口で入手するのが一般的です。
公告に、申請書の請求方法や提出先が記載されていますので、必ず確認してください。
提出時に必要なものは以下の通りです。
- 金融機関所定の様式の被害回復分配金支払申請書
- 運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証などのコピーなどの本人確認書類
- 振込時の「利用明細票」の原本またはコピーなど被害の事実を証明する資料
- 受理番号が記載されたメモ、被害届出証明書など警察への被害届出を証明する書類
申請書の記載に不備があったり、必要な書類が不足していたりすると、審査が遅れたり、最悪の場合、申請が受理されなかったりする可能性もあります。
金融機関の案内に従い、正確に記入・提出することが重要です。
返金までの期間が半年〜1年以上かかる理由
被害に遭ってから、実際に分配金が支払われる(返金される)までには、非常に長い時間がかかります。 目安としては、口座が凍結されてから最短でも半年程度、通常は1年以上かかることも珍しくありません。
その理由は、前述の通り、法律で定められた手続きのステップが多いからです。 特に「失権公告」に最低60日、「支払申請公告」に最低30日という期間が法律で義務付けられているため、この期間を短縮することはできません。
さらに、金融機関内での審査や、複数の被害者がいる場合の調整、支払手続きなどにも時間がかかります。
被害に遭った直後の不安な時期に、「手続きはまだか」と焦る気持ちは当然ですが、救済法による返金手続きは長期戦になることを、あらかじめ理解しておく必要があります。

返金額の決まり方や返金確率を高めるために必要なこと

振り込め詐欺救済法による返金額がどのように決まるのか、その返金確率(分配金を受け取れる確率)を少しでも高めるために、被害者ができることは何なのか。
ここでは、返金額の計算方法と、被害回復の鍵となる行動について解説します。
口座残高と被害総額の割合で振り込め詐欺の返金額が決まる仕組み
被害回復分配金の額は、以下の2つの要素によって決まります。
- 凍結された口座の残高
- 申請を行った全被害者の被害総額
計算方法は、以下のように凍結残高を被害総額に占める個々の被害額の割合に応じて分け合う方式です。
- 凍結時の口座残高:100万円
- 申請した被害者:3名(Aさん、Bさん、Cさん)
- Aさんの被害額:100万円
- Bさんの被害額:150万円
- Cさんの被害額:250万円
- 被害総額(A+B+C):500万円
この場合、被害総額500万円に対して、口座残高は100万円しかありません(被害総額の20%)。 したがって、各被害者への分配金は、それぞれの被害額の20%となります。
- Aさんへの分配金:100万円(被害額) × 20% = 20万円
- Bさんへの分配金:150万円(被害額) × 20% = 30万円
- Cさんへの分配金:250万円(被害額) × 20% = 50万円
このように、口座残高が被害総額に満たない場合、被害額の一部しか返金されないのが現実です。
もし凍結残高が被害総額(500万円)以上あれば、全員が被害額の全額(Aさん100万円、Bさん150万円、Cさん250万円)を受け取ることができますが、そのようなケースは稀です。
複数の被害者がいる場合は按分されるため個々の返金率が下がることを理解する
振り込め詐欺に使われる犯罪利用口座は、一人の被害者だけではなく、短期間に多数の被害者から資金をだまし取るために使われていることがほとんどです。
そのため、口座凍結時に残高が残っていたとしても、その残高を、同じ口座に振り込んでしまった他の多くの被害者と分け合わなければなりません。
自分一人が100万円振り込んだとしても、口座残高が100万円、他に9人の被害者(被害額各100万円、被害総額1000万円)がいれば、自分の取り分は残高100万円の10分の1、つまり10万円になってしまいます。
このように、他に被害者が多ければ多いほど、個々の被害額に対する返金率は低くなるという仕組みを理解しておく必要があります。
ご自身の被害額に対する返金率が10%や5%といった低い水準になることも、十分にあり得るのです。
返金確率を高めるには迅速な凍結依頼と証拠の確保が最も重要
これまで述べてきた通り、振り込め詐欺救済法による返金は、凍結時の口座残高にすべてがかかっています。
そのため、被害者が返金確率を少しでも高めるためにできる唯一かつ最大の行動は、被害に気づいたら、1分1秒でも早く、振込先の金融機関に連絡して口座の凍結を依頼することに尽きます。
詐欺グループが資金を引き出す前に口座を止めることさえできれば、残高が確保され、分配金を受け取れる可能性が生まれます。逆に、この初動が遅れれば、返金を受けられる可能性はゼロになります。
また、凍結依頼と同時に確実に分配金の申請手続きを行うために、証拠を確実に保全することが不可欠です。
特に「振込利用明細」は、申請手続きにおいて、ご自身がその口座にいくら振り込んだかを証明する最も重要な証拠となります。これがなければ、申請が認められない可能性すらあります。
振込明細・チャット履歴・スクリーンショットなど証拠保全のチェックリスト
被害回復分配金の申請手続きや警察への届出、弁護士への相談に備えて、以下の証拠や資料は必ず消去せず、手元に保管しておいてください。
必須レベルの証拠は以下の通りです。
- 振込時の「利用明細票」(原本):ATMで振り込んだ場合に発行される紙。
- インターネットバンキングの振込完了画面:スクリーンショット、または印刷したもの。振込日時、振込先口座情報、金額が明記されていること。
- 本人確認書類:運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証など(申請時にコピーが必要)。
- 警察への被害届受理番号:警察に届け出た際に発行される番号。
また、経緯の証明となる重要な証拠は以下の通りとなります。
- 犯人グループとの通信履歴
- メール(本文、ヘッダー情報)
- SMS(ショートメッセージ)
- LINE、+Message、WhatsApp、Telegramなどのチャットアプリの履歴(スクリーンショットと、可能ならエクスポートしたテキストデータ)
- 犯人から送られてきた書類や画像
- 契約書、請求書、身分証(偽造)の写真など。
- 詐欺サイトの情報
- ウェブサイトのURL
- サイト全体のスクリーンショット
- 相手に関する情報(メモ)
- 相手の氏名(偽名)、会社名(架空)、電話番号、メールアドレス
- 会話の内容、いつ、どのような指示を受けたか(時系列で)
これらの証拠が多ければ多いほど、金融機関や警察、弁護士が状況を正確に把握し、手続きをスムーズに進める助けとなります。

振り込め詐欺救済法だけで足りないときの返金を求める方法

振り込め詐欺救済法の手続きを経ても、返金がゼロだった、被害額の一部しか戻ってこなかった場合、残りの被害額について、諦めるしかないのでしょうか。
以下では、救済法以外で被害回復を目指す方法について解説します。
民事手続き(返還請求・損害賠償)を行う
振り込め詐欺救済法は、あくまで口座に残っていたお金を分配する制度であり、犯人に対して被害額全額の支払いを命じるものではありません。
救済法で分配金を受け取った場合でも、被害額に満たない部分(例えば、被害額100万円のうち、分配金が10万円だった場合、残りの90万円)については、法的には犯人に対して請求する権利が残っています。
具体的には、犯人(詐欺師本人や、詐欺グループの主犯格)を特定し、その相手に対して不法行為に基づく損害賠償請求や不当利得返還請求といった民事上の訴訟などの法的手続きを行うことになります。
しかし、これには以下のような高いハードルがあります。
- 警察の捜査で犯人が逮捕・起訴される必要がある
- 氏名、住所など犯人を特定する必要がある
- 特定できても、犯人に資力や財産などの支払い能力がなければ、裁判で勝訴しても実際にお金を回収することは困難
現実的には、救済法で回収できなかった分を民事訴訟で取り戻すのは極めて難しい道ですが、法的な選択肢としては存在します。
投資詐欺などの対応策を利用する
被害が、「海外口座への送金」「暗号資産(仮想通貨)での送金」「現金手渡し」などの振り込め詐欺救済法の対象外となるケースだった場合は、どうすればよいでしょうか。
この場合も、被害回復の手段は原則として前述の犯人を特定して、損害賠償請求などの民事上の請求を行うという方法しかありません。
特に、送金先が海外であったり、暗号資産が絡んだりする投資詐欺や国際ロマンス詐欺の場合、犯人グループが国外に拠点を置いていることが多く、日本の警察の捜査や法律の適用が及ばないため、犯人の特定はさらに困難を極めます。
被害額が非常に高額で、どうしても諦めきれない場合は、国際的な詐欺事件や暗号資産の追跡に精通した弁護士などに相談し、回収の可能性がわずかでもないか、検討することになります。
75%補償が適用される場面では、預金者保護法を使って返金を受ける手続きを行う
前述した通り、振り込め詐欺と混同しやすいですが、預金者保護法による補償が受けられるケースがあります。これは、被害者が自ら振り込んだのではなく、キャッシュカードや通帳をだまし取られた結果、不正に預金が引き出された場合です。
預金者保護法の対象となる手口の例は以下の通りです。
- 警察官や金融機関職員、市役所職員などを名乗る犯人から「あなたのキャッシュカードが不正利用されている」「古いカードを交換する必要がある」などと電話があり、自宅に来た犯人(受け子)にカードを手渡してしまった。
- その際、巧みに暗証番号を聞き出された(または、暗証番号を紙に書かせて封筒に入れさせ、すり替えられた)。
このようなキャッシュカード手渡し型の被害の場合は、振り込め詐欺救済法ではなく、預金者保護法に基づいて、ご自身の取引金融機関に補償を求めることになります。
ただし、預金者保護法では被害者側に暗証番号を他人に教えた、カードに暗証番号を書いていたなどの重大な過失があると補償はゼロに、単なる生年月日など推測されやすい暗証番号だったなどの過失があると補償額が75%に減額される可能性があります。
カードを手渡してしまった経緯や暗証番号の管理状況が、補償額の判断に大きく影響します。
振り込め詐欺で弁護士に相談するメリット

被害に遭った直後、警察や金融機関への連絡で手一杯な中、弁護士に相談するという選択肢は、ハードルが高く感じるかもしれません。
しかし、法律の専門家である弁護士に相談することには、被害者ご本人では得難い、以下のようなメリットがあります。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
返金の可能性を専門家が正確に判断してくれる
被害者ご本人が「自分は振り込め詐欺救済法の対象になるのか?」「預金者保護法は使えないのか?」「返金率は結局どのくらいになりそうか?」とインターネットで調べても、断片的な情報に混乱してしまうことが多いです。
弁護士にご相談すると、被害の手口や振込か手渡しか、国内か海外か、証拠の有無などの被害の具体的な状況を詳細にヒアリングした上で、法的な観点から、ご自身の状況に合わせた、現実的かつ正確な見通しを伝えてもらうことができます。
これにより、無駄な期待を抱き続けたり、逆に早すぎる段階で泣き寝入りを決め込んでしまったりすることを防ぎ、冷静に次の一手を考える土台ができます。
複雑な手続きを弁護士が代行することで時間と労力の負担が大幅に減る
振り込め詐欺救済法の申請手続き自体は、被害者ご本人でも行うことは可能です。
しかし、そのためには、預金保険機構のホームページで公告を自分でチェックし続け、申請期間が始まったら金融機関から申請書を取り寄せ、振込明細などの証拠を揃え、正確に書類を作成して提出し、金融機関とのやり取りを行う必要があります。
被害に遭って精神的に深く傷つき、疲弊している中で、これらの手続きをすべてご自身で行うのは、時間的にも労力的にも、そして精神的にも非常に大きな負担となります。
弁護士に代理人申請することで、こうした一連の複雑な手続きをすべて被害者の代理人として行うことが可能です。
被害者ご本人は、弁護士からの報告を待つだけでよく、手続きの煩わしさから解放され、心の平穏を取り戻す時間に充てることができます。
これが、弁護士に依頼する最大のメリットの一つです。
相手方との交渉や内容証明の作成を任せられるため精神的な負担が軽くなる
もし、救済法での回復が望めず、犯人が特定できた場合や、詐欺に関与した口座名義人(犯人ではないが、口座を売買・譲渡した者)に対して損害賠償請求などの民事上の請求を行うという選択肢を検討する場合、法的な手続きが必要になります。
詐欺師側に対して内容証明郵便を送付して請求を行ったり、裁判所で訴訟や支払督促の手続きを行ったりすることは、法律の知識がなければ非常に困難です。
また、万が一、相手方と直接交渉する必要が生じた場合、被害者が詐欺師と直接対峙することは、精神的に計り知れないストレスとなります。
弁護士は、こうした法的な請求手続きや、相手方との交渉のすべてを被害者の代理人として行う専門家です。
被害者が矢面に立つことなく、法的な権利を実現するために行動し精神的な防波堤としての役割も果たします。

二度と振り込め詐欺の被害者にならないために今できる対策

被害回復の手続きを進めると同時に、二度と同じ被害に遭わないため、また、ご家族や大切な人が被害者にならないために、今できる対策を知っておくことも重要です。
詐欺の手口は日々巧妙化していますが、基本的な対策の積み重ねが被害を防ぎます。
各項目を以下で詳しく解説します。
最近急増している特殊詐欺の手口と共通点を家族と共有しておく
振り込め詐欺は現在、特殊詐欺という総称で呼ばれ、様々な手口が生まれています。
- オレオレ詐欺(家族を装う)
- 還付金詐欺(市役所職員などを名乗り「医療費や保険料の還付がある」とATMに誘導する)
- 架空料金請求詐欺(「未納料金がある」とSMSやハガキで脅し、電子マネーなどで支払わせる)
- サポート詐欺(PCに偽のウイルス警告を出し、サポート費用名目で支払わせる)
- SNS型投資・ロマンス詐欺(SNSで知り合い、投資や結婚をちらつかせて送金させる)
警察庁(SOS47特殊詐欺対策ページ)や自治体、金融機関のホームページでは、こうした最新の手口が常に情報発信されています。
「自分は大丈夫」と思わず、どのような手口があるのかを知り、「電話やSNSでお金の話が出たら詐欺を疑う」という意識を、ご自身だけでなく、ご家族(特に高齢のご両親など)と日頃から共有しておくことが、最大の予防策となります。
「振り込め詐欺かもしれない」と感じたときのチェックポイントを知る
犯人グループは、被害者に冷静に考える時間を与えないよう、巧みな話術で焦らせ、急がせようとします。
もし、電話やメール、SNSなどで以下のようなキーワードが出てきたら、それは詐欺である可能性が極めて高いです。
- 「お金」「キャッシュカード」「暗証番号」「電子マネー(ギフト券)」
- これらの言葉が出たら、即、詐欺を疑ってください。
- 「今日中」「今すぐ」「この電話でしか手続きできない」
- 公的機関や金融機関が、手続きを異常に急がせることは絶対にありません。
- 「あなただけ」「他の人には秘密に」
- 周囲に相談させないようにするのは、詐欺の典型的な手口です。
- 「還付金があるからATMに行って」
- 市役所や税務署、銀行員がATMの操作を指示することは絶対にありません。ATMでお金が戻ってくる操作は存在しません。
- 「ウイルスに感染した」「警告」
- PCの画面に突然表示される警告音や警告メッセージは、ほぼサポート詐欺です。
これらの言葉を聞いたら、すぐに電話を切り、一度冷静になって、家族や警察に相談してください。
不安を感じたときに相談できる警察・自治体などの公的窓口を把握しておく
「これって詐欺かな?」と少しでも不安を感じたときに、すぐに相談できる窓口を知っておくことも大切です。
- 警察相談専用電話: #9110
- 緊急の事件・事故ではありませんが、警察に相談したいことがある場合に有効です。
- 消費生活センター: 188(いやや!)」(政府広報オンライン)
- 詐欺的な商法や契約トラブルなど、消費生活全般に関する相談窓口。消費者庁の「被害にあったら」のページも参考になります。
- お住まいの自治体の相談窓口
- 市区町村の役所に、高齢者向けの詐欺被害相談窓口などが設けられている場合があります。
- 金融機関の相談窓口
- 取引のある銀行や信用金庫でも、振り込め詐欺に関する相談を受け付けています。
一人で悩まず、公的な窓口に相談することで、客観的なアドバイスをもらえたり、詐欺であると気づかせてもらえたりします。
これらの番号を、電話機のそばに貼っておくのも有効な対策です。
振り込め詐欺の返金率で泣き寝入りしないために押えておきたいまとめ

振り込め詐欺救済法は、被害回復のための大切な制度ですが、万能ではないという前提を知っておく必要があります。
よく見かける「返金率88%」という数字は、被害額の88%が戻るという意味ではありません。実際の返金は、凍結された口座に残っていた残高が原資になります。そのため、以下のようなケースが大半です。
- 残高がゼロなら返金もゼロ
- 残高が少なければ被害額の一部のみ
被害総額との比較で見れば、実際の返金率は数%程度に留まることも珍しくありません。ただし、返金されるかどうかの確率はゼロではありません。
そのわずかな可能性を最大限に高めるために、被害者が取るべき行動は決まっています。
- 警察への連絡(#9110 または 110番):被害届を提出し、受理番号をもらう。
- 振込先金融機関への連絡:最優先で連絡し、一刻も早く口座凍結を依頼する。
- 証拠の保全:振込明細、犯人とのやり取り履歴などをすべて保存する。
この初動の速さが、口座に残高を残せるかどうか、ひいては返金を受けられるかどうかを分ける最大の鍵となります。
泣き寝入りする前に、一度、法律の専門家である弁護士にご相談ください。
ご自身のケースで、法的にどのような手続きが可能で、どの程度の回収見込みがあるのかを客観的に知ることができます。複雑な申請手続きを任せることで、精神的な負担を大幅に減らすことも可能です。
被害に遭われた方の多くが、迅速な行動と適切な手続きによって、たとえ一部であっても被害回復を果たしています。
一人で抱え込まず、専門家の力も借りながら、諦めずに今できる最善の行動をとることが重要です。
